コラム

工事管理者とは?役割や必要性・工事管理者との違いを解説

2023年10月13日

一定以上の規模の建物を建築する場合、工事監理者を定めなければなりません。
「工事監理者」とは現場監督のことだろうか?と思う方もいますが、「工事管理者(施工管理者)」と「工事監理者」は読み方は同じですが仕事内容は異なります。

今回は、工事管理者の仕事内容や必要性、工事管理者との違いを紹介します。
これから家を建てる方は、参考にしてください。

工事管理者とは?役割や必要性・工事管理者との違いを解説

工事監理者の役割や仕事内容を解説

工事監理者とは建築工事においてどのような役割を担っているのでしょうか。
工事監理者は現場監督のようなイメージを持っている方もいますが、実際は下記にご紹介するとおり、かなり異なっています。

各工事と設計図書を照合する役割

工事監理者は、建築工事が設計図書の内容通りに正しく行われているか、確認する役割を担っています。
設計図書とは工事対象の図面や仕様書など、工事内容の詳細を記した書類全般です。
一般住宅ならば、設計図や仕様書です。

設計図書通りに工事が行われないと、耐震強度が下がったり違法建築になってしまったりする恐れもあります。
そのため、建築に関する専門的な知識を持つ工事監理者のチェックが必要です。

なお、工事監理者は一定規模以上の建築物を建築する現場において、建築主が定めなければなりません。
工事監理者の役割は、設計図書と実際の工事内容の確認だけでなく、建築主の代わりに現場監督との協議や工事に関する要望の伝達も含まれます。

具体的な仕事は現場に指示を伝えること

工事監理者の主な仕事は、建築工事現場で1つの工事が終わるたびに実施する工事の実施内容や品質の検査です。
設計図書と相違ないか、品質は問題がないか検査を行い、修正が必要となったら再工事を指示します。
必要であれば、工事管理者(施工管理者)と両方でダブルチェックをする場合もあるでしょう。

このほか、建築主からの要望があった場合、それが実行可能かどうか工事管理者や現場監督と打ち合わせを行い、その結果を建築主に伝える仕事なども行います。

必要な資格は建築規模で異なる

工事監理者になれるのは、原則として建築士です。
ただし、木造建築で延べ床面積が100㎡以下、2階建てまでならば無資格者でも工事監理が可能です。
したがって、一般住宅の場合は建築士の資格を持っていない方が工事監理を行うケースもあるでしょう。

なお、建築士は1級、2級とありますが、一定以上の床面積と階数を持つ建物以外は、級に関係なく工事監理が可能です。
また、建築主は建築会社やハウスメーカーに建築工事を依頼すれば、工事監理者も会社側が用意してくれます。
注文住宅においては、設計を担当した建築士が工事監理を行う場合もあります。

工事管理者と工事監理者の違い

工事監理者と同じ読み方の仕事に工事管理者(施工管理者)があります。
工事管理者とは、工期に合わせて工事が進むように現場や人員を管理する仕事です。
施工管理技士が工事管理者の仕事を行い、必要ならば工事監理者と打ち合わせやダブルチェックなども行います。

工事管理者が技術者たちを指導し、現場の監督を行いながら工事を進行させ、完成した工事は工事監理者が設計図書と比較しながら検証する流れで工事が進められます。
建築現場では、どちらが偉いなどはありません。
お互いに協力し合って工事を行っていきます。
なお、施工管理者には7種類の資格区分がありますが、工事監理者と仕事をするのは建築施工管理技士や土木施工管理技士です。

工事監理の流れ

工事監理者は、常に工事現場にいるわけではありません。
建築工事は、いくつも工事を行いながら建物を完成させていきます。
工事監理者は、工事が終わるたびに現場に赴き、国土交通省が発行している「工事監理ガイドライン」に沿って正しく工事が行われているかチェックし、その結果を建築主に報告します。

改善点があれば指導を行ったり、工事管理者と打ち合わせをして再発防止に努めたりするのも仕事です。
すべての工事が終わり、検査も終了したら工事完了検査報告書を施主に提出します。
施主はそれを行政機関に提出して、再度検査を受けます。
これで問題がなければ、建築工事は終了して建物は完成です。

工事監理者と工事管理者を兼ねられる?

木造で延べ床面積が100㎡以下、2階建てまでの建物ならば建築士の資格がなくても工事管理者に選任できます。
そのため、ハウスメーカーによっては、工事監理と工事管理の両方を自社の社員が行う場合もあります。

しかし、すべての管理・監理を同じ会社の社員が行うと、組織ぐるみの不正隠蔽もできてしまうため、問題が発生したケースもありおすすめできません。

可能ならば、建物を設計した建築士に工事監理者になってもらうなど、複数の立場の方に工事を監督してもらいましょう。
なお、工事監理者はどこに属している者でも問題ありません。
同じ会社に属している社員でも、独立した建築士にも依頼できます。

まとめ

今回は、工事監理者の仕事内容や工事管理者との違い、建築工事における必要性などを解説しました。工事管理者が工事が安全かつ納期通りに行えるように工事全体を監理するのに対し、工事監理者は、工事が設計図書通りに行われているか確認する仕事を担っています。
工事が安全かつスムーズに終わり、正しい工事方法で行われたと証明する大切な仕事です。